【ものづくり補助金】よくある不採択事例
こういう計画では、「不採択」になる可能性が高いです!
補助金シェルパ™では、製造業を始めとする多数の事業者へ支援を通し、数々の事例を見てまいりました。その中で、「(過去に他社へ支援をお願いして)不採択だった申請書」について分析した結果、ある程度共通している点について「よくある不採択事例」として以下にまとめました。当社が支援をする際には、以下のような計画では不採択なる可能性が高いと正直にお伝えしております。補助金活用を検討される方の参考になれば幸いです。
その1:財務状況に合わない過剰投資や不適切投資(適正性に欠ける)
ものづくり補助金の上限は「1000万円」(類型によっては3000万円まで増枠!)と高額になっており、「せっかくなら」という想いで、1500万円以上(補助率が3分の2である場合にちょうど上限となる金額)の多額かつ無理のある設備投資を計画する企業も少なくありません。しかし、現在の財務状況から判断して明らかに高額である場合、例えば、債務超過であったり、3期連続で赤字が計上されていたり、今回の設備投資に伴う借入れでキャッシュフローが悪化する場合などは、「過剰投資」と判断され、適切な投資計画ではないと判断される可能性があります。
設備投資に際して、その「投資対効果」を考えるための指標はいくつかあり、例えば『回収期間法」という指標があります。端的に言えば、「投資したお金を何年(何か月)で回収できるか」という考え方であり、短期間で回収できればできるほど、投資効率が高いものになります。
(1)回収期間
= 設備投資額 ÷ 設備投資によって得られる年間キャッシュフロー(設備投資によって得られる利益+設備投資に関わる減価償却費の合計)
設備によって、耐用年数が定められていますので、少なくとも耐用年数を下回るような計画でなければ、適切な設備投資とは言えないでしょう。「補助金をできるだけ多くもらいたい」というお気持ちは理解できますが、それがゆえに経営計画に無理が生じないように注意しましょう。
その2:そもそも要件を満たしていない(交付決定前発注や達成率が下回る等)
「補助金シェルパ™」では補助金活用のご相談を頻繁に頂きますが、高い確率(2割くらい!)で発生するのが、「既に発注した設備」に関するご相談です。一部の補助金制度では、過去に投資したものも対象になることがありますが、原則的には「交付決定通知書に記載のある通知日以後(≒補助事業実施期間内)」に発注した設備等が対象となり、それ以外(補助事業実施期間外)は「補助対象外経費」となります。「設備投資に補助金がもらえる可能性がある」という情報だけを得て、とりあえず勢いで発注される方に多いですが、必ず「公募要領」を一読するようにしましょう。また、補助金制度に詳しくない方が支援したり、自社で作成した方の事業計画書をチェックしますと、「要件である達成率を下回っている」ケースも見受けられます。「付加価値額の伸び率が年平均〇%」と定められているにも関わらず、その数字を満たしていないようなケースです。いくら素晴らしい計画書になっていても、「補助要件」を満たしていないわけですから、100%不許可となります。公募要領はしっかりと確認するようにしましょう。読み込むだけで、形式的なミスは防げます。
その3:「審査項目」を踏まえた申請書になっていない(審査員目線を考慮せず)
「ものづくり補助金」の「公募要領」には、「審査項目が事前に公開」されています。審査員が「これらに関する申請書の記載を見て、該当するか否か、採点しますよ」というように、予め「採択のためのヒント」を与えているにも関わらず、それらを網羅的に、かつ明確に記載していない申請書では、当然、不採択の可能性が高いです。審査員も個人の裁量で審査するわけではなく、ちゃんと「審査項目」に沿って審査されているのです。いわば、モノづくり補助金の申請には、「記載すべき論点」がしっかりと定められており、「審査項目に記載のある事項をすべて、最低限でもいいから、とにかく明確に記載すること」が採択へ向けた第一歩となります。
その4:計画が抽象的であり、実現可能性が低い(又は実現しても経済効果が弱い)
「革新性」を狙うあまり、計画自体が(企業の実力と比較して)壮大かつ理想的であり、「(技術的に)実現が困難では?」と思われる計画は、高い確率で不採択となります。例えば、耳障りの良い「量子コンピュータ」「ブロックチェーン技術」「人工知能(AI)」などは、大企業ならまだしも、まだまだ多くの中小企業では実現性が低いものとされる印象です。このような計画は、採択されやすいものではなく、逆効果になり得ますので、申請書作成の際は注意が必要です。中小企業庁も、必ずしもそういった最先端の技術を求めているわけではなく、どちらかというと「中小企業ならではの創意工夫により、競争力強化に繋がり、無理なく計画通りに実現できる現実性のある事業計画」の方が採択される可能性は高いのです。なお、最先端の技術開発を伴う計画では、大学などの研究機関と共同で進める場合などは、別の補助金制度がありますので、そちらを活用するのが良いでしょう。少なくとも「ものづくり補助金」では、「計画の実現性に確証が持てる」内容で経営計画を組み立てる必要があります。
また、実現性へのハードルは低くても、「経済効果(投資対効果)」が弱い場合は、やはり不採択の可能性が高くなります。例えば、1千万円設備投資をして補助事業通りに実現した結果として、「売上高増加自体は望めず、ただ単に経費が圧縮できる結果として利益が増えるに過ぎない」計画です。このような、「売上高増加を伴わない計画」は投資対効果が低くなり、採択される可能性は低いと考えた方が良いでしょう。
その5:単なる設備の入れ替えや購入であり、競合優位性が生じていない(弱い)
前述の「その4」にも通じますが、「老朽化した既存設備の単純な入れ替え」もよくある不採択事例です。まだ「ものづくり補助金」制度がスタートして間もないころは、このような計画でも採択されていた事例もありますが、採択競争が激化している現在においては、このような「設備の更新」だけでは、不採択となる可能性が高いと言えます。その他、例えば単純に「最先端かつ生産能力の高い機械設備を増設して導入する」という計画も、不採択の可能性が高いです。これは、「同業他社が同じ設備を入れれば、競争優位性が無くなる」ためです。「入れ替えではなく増設」している点で、単純な入れ替えではありませんが、同業他社も同じように設備投資すれば、同じ生産能力が獲得できてしまうような計画では、不採択の可能性が高いでしょう。中小企業ごとに有する「強み」が必ずあるため、そのような強みを活かして、創意工夫する計画が必要です。難解かつ高度な計画が必ずしも求められるわけではありませんが、「競合優位性を獲得するための創意工夫は必須」です。過去の採択事例において、30字程度で「事業計画名」が公表されておりますので、それらを参考にしてヒントを得ながら、具体的かつ工夫された計画を練るようにしましょう。
「採択」への一歩は、「不採択理由を消すこと」です!
上記5つの「不採択理由」を徹底排除することで、1~2回の申請で採択されます!
もちろん競争の激しい「ものづくり補助金」の申請においては、採択されるためには、『申請書の作成技術(図やグラフの使い方、効果的な見せ方等のノウハウ)』は必須です。素晴らしい計画であっても、説明が下手で、伝わらなかったら意味がないためです。しかし、勘違いしてはいけないのは、「見せ方で採択を目指せるほど簡単な補助金制度ではない」という点です。申請の多数を占める製造業者の方々が、普段「Word」や「Excel」を使用しないことは審査員もわかっており、形式的な表記に関わらず、計画内容をきちんと吟味して頂けます(もちろん時間的制約はあります!)。そのため、経営計画そのもののブラッシュアップを怠ってはいけません。しっかりした計画が立てれた後は、上記の「よくある不採択理由5つ」に抵触しなければ、無事に採択されるとお考え頂いて大丈夫です。小手先のことよりも、とにかく無謀だったり、過剰だったり、効果の薄い計画になっていないかご注意ください。本記事が参考になれば幸いです。